［キミのことが知りたくて］手塚国光

【前編】

手塚国光　「ふっ…！はっ！」

不二周助　「あれ…手塚、ここにいたんだ」

白石蔵ノ介「自主練しとるって聞いたんやけど、もう終わってもうたんか」

手塚国光　「お前たち、なぜそれを？」

幸村精市　「さっきそこで齋藤コーチに会ってね。彼から教えてもらったんだ。まだ間に合うなら一緒に練習しようと思ったんだけど、残念だよ」

白石蔵ノ介「練習するんやったら　誘ってくれたらええのに」

不二周助　「そうだよ。僕らも付き合ったのに」

手塚国光　「次は声をかける」

白石蔵ノ介「おっ。ホンマやな？」

手塚国光　「ああ。それより、お前たちはこんな所で何をしていたんだ」

白石蔵ノ介「綺麗な花を愛でてきた帰りや」

手塚国光　「……？」

不二周助　「花壇の花に水やりをしてきたんだよ」

幸村精市　「白石と不二が付き合ってくれるって言うから、3人でね。今度は手塚も誘って、4人で水やりをしようか」

手塚国光　「そんなに人数はいらないんじゃないか？」

白石蔵ノ介「みんなでワイワイしとったら賑やかで楽しいやん。それに、合宿中の今こそ仲良うなるチャンスなんやし」

不二周助　「うん。他校とか関係なく、一緒に過ごしているしね」

幸村精市　「こんな機会は今だけかもしれない。貴重な時間だと思って、大切にしないといけないな」

手塚国光　「とはいえ、合宿の目的は交流ではない。そもそも、ここでは全員がライバルも同然だ」

白石蔵ノ介「まあ、うん…わかっとるんやけど…。ずーっと気ぃ張ってんのもキツいやろ」

不二周助　「ごめん。手塚は真面目なんだ」

手塚国光　「おい…不二」

不二周助　「日中は仕方ないけどさ、夜くらいは肩の力抜いたっていいんじゃないかな」

白石蔵ノ介「不二クンの言う通りやで。なんやったらもう1回、花でも眺めに戻ろか？きっと手塚クンも和むで」

手塚国光　「いや、遠慮しておく」

白石蔵ノ介「なんや…つれへんなぁ」

幸村精市　「手塚は花が好きじゃないのかい？」

手塚国光　「そうではない。汗を流しに行きたいだけだ」

不二周助　「ああ…そっか。練習の帰りだもんね」

白石蔵ノ介「せやったな。引き止めてもうてすまんな、手塚クン」

手塚国光　「構わない。では失礼す――」

幸村精市　「ちょっと待った」

手塚国光　「…む？」

幸村精市　「手塚、キミまた1人で行こうとしていたね？」

白石蔵ノ介「仲良うなりたいっちゅーのに、寂しいわ…」

不二周助　「僕らを置いていく…とは言わせないよ」

手塚国光　「…………」

白石蔵ノ介「せっかくここで会うたんやし、4人で熱い湯浸かりに行こか」

不二周助　「いいね」

幸村精市　「まさか断ったりしないよな、手塚」

手塚国光　「やれやれ…わかった。いいだろう」

白石蔵ノ介「よっしゃ！ほんならさっそく向かうで、大浴場！」

【後編】

不二周助　「気持ちのいい湯加減だったね」

手塚国光　「ああ」

白石蔵ノ介「風呂はやっぱええな。疲れも取れるし、健康にもええし、めっちゃ最高やったわ」

幸村精市　「うん。リラックスできたよ」

不二周助　「……ねえ手塚、このあと時間あるかい？」

白石蔵ノ介「おっ、サボテンの写真やん」

不二周助　「どの写真もよく撮れてるだろう。みんなに見せたかったんだ」

幸村精市　「フフ、たまにユニークなアングルがあって面白いね」

白石蔵ノ介「ホンマやなぁ。これとかサボテンの影が顔みたいに映っててオモロイわ」

不二周助　「手塚も見てみてよ」

手塚国光　「ああ。写りがいいものばかりだな」

白石蔵ノ介「ちょっ、手塚クン、それだけかいな。ホンマに？今の流れ笑うとこやったろ」

不二周助　「手塚はあんまり笑わないから」

白石蔵ノ介「そうゆうたら、笑ってんの見たことない気ぃするわ。アレか、お笑いの面白さがわからんちゅータイプか。ウチの後輩にもおるわ」

手塚国光　「いや？面白いとは思うが」

白石蔵ノ介「ホンマかいな…。無表情で言わんといて欲しいわ…。信じられへん…」

不二周助　「意外とバラエティ番組見てたりするよね、手塚」

幸村精市　「へえ。じゃあ、そういうときは笑ったりしてるのかな？」

不二周助　「さあ…どうだろうね」

白石蔵ノ介「人には笑顔見せへんちゅーわけか。手塚クンの笑った顔、ごっつい気になってきたわ。こないなったら、俺が笑わせるしかあらへんな」

不二周助　「手塚は手ごわいと思うけど」

白石蔵ノ介「不二クン、お笑いゆうたら大阪、俺ら四天宝寺や。俺かてお笑いの基本やったら、もちろん勉強済みやで」

幸村精市　「つまり、白石が漫才を披露してくれるんだね」

白石蔵ノ介「とっておきの聞かせたるわ。手塚クン、髪乾いてへんけど、アレ使わへんの？」

手塚国光　「…アレとは？」

白石蔵ノ介「アレゆうたら1つしかないやろ。あのネジ回すヤツ？プラスとマイナスがあってなぁ～…」

手塚国光　「ドライバーか」

白石蔵ノ介「って、ちゃいました。ドライヤーでしたわ～！　ドッ！ワッハッハ！！」

手塚国光　「……」

幸村精市　「はは……今のは厳しいね」

不二周助　「白石、ゴメン…。今のはちょっと…」

白石蔵ノ介「アカン……またや…。またスベってもうた……」

手塚国光　「またとは、お前はいつもそうなのか？」

白石蔵ノ介「どうも俺は基本に忠実すぎるらしいわ…。こないなったらこの場で修行するで。手塚クンが笑ったら、俺のお笑いも一歩先に進んだっちゅーことやしな。手塚クン、よろしゅう頼むで」

白石蔵ノ介「アカン……手塚クンの表情どないなってんのや…。ピクリともせぇへん…」

手塚国光　「そうか？俺なりに楽しませてもらった」

不二周助　「フフ。よかったね、白石」

幸村精市　「面白いネタ、いくつかあったよね。白石、もっと自信持ってもいいんじゃないかな」

手塚国光　「ああ。おかげで有意義な時間になった」

白石蔵ノ介「みんな……おおきに。手塚クンの笑った顔は見られへんかったけど、結果オーライやな」

不二周助　「思いがけず、見られる日が来るかもしれないよ。ね、手塚」

手塚国光　「フ…どうだろうな」